
腹式呼吸は骨盤を内側から広げる作用がある
腹式呼吸が諸悪の根源
腹式呼吸が健康に良い、耳にしたこともあると思います。ですが、腹式呼吸には幾通りもの方法があるのをご存知でしょうか。そして、健康法で言う“下腹部を膨らますように“行う腹式呼吸は害にしかなりません。
私が学生時代、解剖学では「男性は腹式呼吸で女性は胸式呼吸」と習いました。私が教壇に立つ時も、同じ事を教えています。しかし、これは学問上の事で、実生活には当てはまらない事の一つです。それというのも、胸式呼吸を行なっているはずの女性も腹式呼吸を行なっているからです。また、声楽家や吹奏楽の方が行っている“腹式呼吸”と健康法で言う“腹式呼吸”は全く別物です。
以前、お越しになっていた声楽家の方は「歌う時はお腹を膨らませる事はない」と言っていました。お腹を膨らませると横隔膜を下支えするのが難しく、声の通りが悪くなるのだそうです。そして、下腹部を膨らませる腹式呼吸を行うと姿勢が悪くなり、高い音を出せなくなってしまうのだそうです。そうです。いわゆる腹式呼吸を行うと姿勢が悪くなるだけでなく、いろいろな弊害が生じるのです。
腹式呼吸は脂肪をため込んでしまう
一番、変化するのは呼吸量です。腹式呼吸だと500mlも呼吸量が減ってしまうのです。少し難しい話ですが、吸い込んだ息のうちおよそ150mlはガス交換に使われません。ですから、1回につき350mlの減少となります。1日に約2万回呼吸していますから、7,000リットルものガス交換が少なくなるのです。吸気中の酸素濃度は約20%で呼気の酸素濃度は約17%ですから、単純に計算して、1日につき210リットルもの酸素の摂取が少なくなります。細かな計算を省きますが、ブドウ糖50gが過剰になれば脂肪14gが生成されますので、酸素摂取が減れば、およそ470gもの脂肪がたった1日で溜め込んでしまう計算になります。これではいくら食事制限をしても中々痩せられるものではありません。
また、腹式呼吸は横隔膜を下に押し下げて、肺の中に空気を送り込む呼吸法です。ですから腹式呼吸をし続けますと、胸郭が狭くなり、横隔膜で腹部内臓を下に押し下げる事になりますし、腹部のリンパの流れを疎外したり、静脈の流れを悪くすることも十分考えられます。これらは上半身が貧弱でウエスト周りや下腹部が太くなる原因になります。ようするに、腹式呼吸は、上半身を貧弱にすると同時に脂肪を溜め込みやすくするのです。